美観地区での町家ステイケーション 〜倉敷に暮らすように泊まる〜

倉敷美観地区では、昔ながらの商家や医院などの町家をリノベーションした宿泊施設が増えています。商人の町として栄えたかつての生活に思いを馳せながら、そこに暮らしている感覚でゆっくり滞在できるのが魅力です。今回は倉敷美観地区で人気のある3つの宿泊施設に行ってきました。

暮らしの宿 てまり「ゆきかい」

地元作家の手仕事にふれながら、町の住人になりきる

「美観堂」の外観写真

「ゆきかい」は人通りの多い倉敷美観地区の中心部、本町通り沿いの「カフェ有鄰庵」に隣接するショップ「美観堂」の2階にあります。倉敷美観地区に古くからある町家の「旧土屋邸」を改装した一日一組限定の宿で、2階の格子窓から人の行き交う通りの様子が見えることにちなんで名付けられました。

時間とともに移り変わる景色を楽しんで

「ゆきかい」の入り口付近の写真 その1
「ゆきかい」の入り口付近の写真 その2

宿の出入口は「カフェ有鄰庵」と「美観堂」の間の細い路地裏にあるため、隠れ家気分でワクワクしながら入室。

「ゆきかい」の部屋から見た美観地区の町並みの写真 その1
「ゆきかい」の部屋から見た美観地区の町並みの写真 その2

居間の格子窓からは宿名のとおり町並みや人の流れを眺められます。倉敷美観地区は時間ごとに異なる表情を見せてくれ、夕方以降になると日中のにぎわいから一変、ムーディーな夜の風景に移り変わっていきます。

「ゆきかい」の部屋から見た美観地区の町並みの写真 その3
ベランダからは阿智神社方面を望むことができます。

寝室に隣接したベランダからは表通りとはまったく違う景色のギャップを楽しめます。1階にはレトロな五右衛門風呂が用意されていました。湯を張るのはセルフサービス。鋳鉄製の浴槽は遠赤外線効果があり、湯をまろやかにして体を芯まで温めてくれるそうです。

「ゆきかい」の部屋のお風呂の写真 その1
「ゆきかい」の部屋のお風呂の写真 その2

地産地消ディナーやインテリアで岡山を感じる

部屋に飾られた陶器
「ゆきかい」の夕食付きプランで食べられる和食店特製の夕食セット

夕食付きのプランを予約すれば、美観地区内の和食店特製の夕食セットがデリバリーできます。ユニークな円形のお重に盛り付けられた料理は岡山の食材をふんだんに使ったメニューとなっています。夕暮れの通りを眺めながらのディナーは非日常を感じられますよ。

「ゆきかい」の部屋の様子の写真

また、客室に配置された椅子やちゃぶ台、ランプシェード、器などは岡山在住の作家による作品を中心に、丁寧に作られたものが選び抜かれています。実際に使うことで手仕事の魅力を知ることができます。中でもプレートや器、花器、照明器具は玉野市に工房を構える十河隆史氏の作品。シンプルでモダンな作品たちは和のインテリアとも相性抜群です。

なお、備えている作品のほとんどは1階のショップ「美観堂」で購入できるので、もしお気に入りの品があればぜひ。

「美観堂」の店舗内の写真
「美観堂」の店舗内の商品の写真 その1
「美観堂」の店舗内の商品の写真 その2

施設からのメッセージ

暮らしの宿 てまり スタッフ

藤本順子さん

地元に還元できる宿として、手仕事のものが主役というコンセプトのもと、『ゆきかい』『おいとま』『まどろみ』とご宿泊可能人数が異なる3つの宿を営んでおります。中でも『ゆきかい』はこぢんまりとした1日1組限定のお部屋ですので、ご夫婦やカップル、一人旅のお客様が多くいらっしゃいます。美観地区のまんなかで、ごゆっくりおくつろぎください。

<DATA>

暮らしの宿 てまり「ゆきかい」

利用人数:1~3名

料金:1泊2名 2万8,600円~(変動あり)

電話:086-486-2225

住所:倉敷市本町2-15 美観堂2F

URL:https://temari-inn.jp/yukikai/

地図:こちら

御坂の家

地元に暮らすように泊まる!人のぬくもりを感じる宿

御坂の家の入り口付近の坂の写真 その1
御坂の家の入り口付近の坂の写真 その2

町家が軒を連ねる倉敷美観地区の本町通りから、鶴形山へ通じる坂を上っていくと焼杉外壁の建物が見えてきます。見晴らしの良い高台の上に立つ一棟貸しの宿「御坂の家」に到着です。

御坂の家の外観写真

御坂の家は地元有志からなる「NPO法人倉敷町家トラスト」が「町家再生第1号」としてリノベーションした宿泊施設。活動の賛同者やボランティアなどの協力を得て2007年に竣工しました。

特別なおもてなしや食事のサービスはなく、全て自分たちで準備します。もちろん、近所のお店でおいしいものをテイクアウトしてくるのも良し。地域住民になった気分で、自分流の滞在を楽しんでみましょう。

約10坪の素敵空間。倉敷美観地区が見渡せるベストスポット

御坂の家の部屋の写真
御坂の家で使用可能な茶器の写真
御坂の家の部屋の梁の写真

入り口をくぐるとまず目に入るのは一枚板のカウンターテーブルを備えた土間キッチン。東向きの窓からは日の出や月の出がよく見えるそう。朝日を浴びながらコーヒーを飲んだり、月を眺めながらグラスを傾けたりと贅沢な時間が過ごせます。

御坂の家のベランダの写真
御坂の家の中庭の写真 その1
御坂の家の中庭の写真 その2

また、和室の障子を開け放つと大きな窓がついた縁側が現れます。倉敷美観地区の眺望がまるで映画のワンシーンのように目の前に広がります。実際、2022年に公開された映画「恋は光」のなかで、当施設は主人公の家のロケ地として使用されました。

御坂の家のキッチンの写真
窓からやさしい木漏れ日が降り注ぐ
御坂の家の風呂場の写真
赤いタイルの壁の向こうがバスルーム

懐かしさに包まれながら、慌ただしい日常を忘れましょう。

宿泊客をつなぐノート「おんさかDiary」

「おんさかDiary」の写真
「おんさかDiary」には日本語だけでなく様々な国の言葉やイラストで宿泊した人たちの様々なメッセージが記されています。

室内の本棚に置かれている「おんさかDiary」には国内外から訪れた宿泊客のメッセージが綴られています。宿泊した感想のほかにも、倉敷のおすすめスポットやグルメ情報を残していく方もいるそうです。気になる方は実際に行ってチェックしてみてくださいね。

御坂の家の中庭の写真 その3

●施設からのメッセージ

NPO法人倉敷町家トラスト理事、建築士

仁科美穂子さん

観光目的はもちろん、地域住民の方には客間代わりとして、観光客の方にはステイケーションやワーケーションの拠点や定期的な別荘代わりとしてなど、さまざまな用途でご利用いただいております。土間や縁側などがある、懐かしくて居心地の良い環境ですので、皆さまもぜひ一度、この町で暮らすようにご滞在ください。

<DATA>

御坂の家

利用人数:1〜3名

料金:平日1名 1万1,000円~、2名 1万5,000円~、3名 1万7,000円~

電話:090-7999-6682

住所:倉敷市本町11-16

URL:https://onsaka.jp/

地図:こちら

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿

倉敷川の景観を独り占め。ロースタイルでくつろぐ極上の空間

倉敷美観地区でギャラリーと複数の宿を運営する滔々。そのうちのひとつ「滔々 民藝館南の宿」は「川畔の宿」「中の宿」「奥の宿」と3棟からなる施設です。2022年にオープンした複合施設「倉敷SOLA」の敷地内にあり、「建物自体が民芸品」ともいえる倉敷民藝館と隣接しています。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の外観写真
滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の入り口付近の写真 その1
滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の入り口付近の写真 その2

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中でも「川畔の宿」は明治期の建物とされる商家の2階を改装したワンルームタイプの施設です。倉敷川沿いに面しているので、部屋の格子窓からは行き交う川舟や路地の様子を見ることが可能。夜はライトアップされた景観を眺めながら、ゆったりと過ごせます。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の施設内部の写真 その1
滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿から眺める美観地区の町並みの写真
滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の施設内部の写真 その2

また、間接照明の落ち着いた雰囲気が味わえるリビングとは対照的な白を基調としたスタイリッシュな空間のバスルームもポイント。浴槽の直上には天窓が配され、倉敷の空を見上げながらくつろぐことが可能です。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿のお風呂場の写真
滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の洗面所の写真

ロースタイルにこだわったしつらえが魅力

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の施設内部の写真

小屋裏ならではの勾配のある低い天井が落ち着いた空間を演出。床生活にこだわっていることから、リビングとベッドルームの床には鉄媒染のカリン材を使用しており、深みのある暖かな色合いをしています。長旅から解放され、ホッとしながら座り込むひとときに寄り添ってくれそうです。

オーダーメイドのインテリアで感じられる、手仕事の技術

家具はすべて部屋のテーマに合わせたオーダーメイド品。リビング中央に置かれたソファは木工作家の藤崎均氏が手掛けた作品で、高さや背もたれの角度は格子窓に合わせて設計されています。椅子敷は倉敷本染手織研究所による「倉敷ノッティング」の逸品を使っています。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の施設内部の写真

また、布団は老舗「丹羽ふとん店」の完全手作り。もっちりと吸いつくような寝心地の布団なので、これを目当てに宿泊する方も多いのだとか。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の寝室の写真

さらにキチネット(簡易キッチン)に備え付けられた器も作家の作品。気に入ったものがあれば隣接のギャラリーで購入もできますよ。

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿のダイニングの写真

●施設からのメッセージ

滔々 スタッフ

石川愛さん

「滔々の宿は1日1組限定のプライベート空間です。それぞれの客室は景色や建物の歴史に合わせてしつらえており、伝統的な意匠や職人の手仕事の魅力が伝わる空間づくりにこだわっています。お客様のなかにはご自宅を新築する際のヒントにしたいとお越しになる方もいらっしゃいます。ここでしか得られない特別な時間をぜひ味わっていただきたいです。」

<DATA>

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿

利用人数:1〜4名

料金:2名 4万4,000円〜(1名の場合も同額)、3名 5万1,700円〜、4名 5万8,300円〜

電話:086-422-7406(ギャラリー)、080-9799-7751(倉敷民藝館南店)

住所:倉敷市中央1-4-13

URL:https://toutou-kurashiki.jp/

地図:こちら

滔々 倉敷民藝館南 川畔の宿の入り口付近の写真

「泊まる」というより、まるで「暮らしている」かのような視点で滞在できるのが町家の魅力。今回紹介した三者三様の魅力を放つ町家の宿で、美観地区の雰囲気や暮らしの魅力を感じてみませんか。

この記事で紹介したお宿マップ

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NPO法人 倉敷町家トラスト

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