吉備の貴重な出土品を展示 美観地区の倉敷考古館で“歴史”を楽しむ

美観地区の中心部・中橋のたもとに立つ、なまこ壁のレトロな建物でおなじみの倉敷考古館。江戸時代の米倉を改装したもので、倉敷を象徴する建造物として、ポスターや切手などのデザインにも使用されています。今回は、岡山県などで発掘された数多くの貴重な遺物を展示している倉敷考古館に伺い、当館の学芸員である伴祐子さんに、施設ができた経緯や見どころをお聞きしました。

倉敷考古館の歴史

倉敷考古館正面

倉敷考古館が誕生したのは、1950年のこと。市民の声を受け、倉敷紡績(現クラボウ)の創業家である「大原家」の大原總一郎と倉敷町長を務めた原澄治が中心となって提案し、多くの市民の協力を得て開館しました。

倉敷考古館側面

戦後復興から高度経済成長へ向かう時代、さまざまな開発の過程で、多くの遺跡・遺物が発見されるようになり、学識層や愛好家だけにとどまらず、「歴史が残してきた物を、広く一般市民にも知ってもらう必要がある」という考えが出てきました。当時の倉敷はまだ現在のような観光地ではありませんでしたが、昭和初期に西洋美術を紹介する大原美術館が開館し、戦後には倉敷民藝館が開館。そして、それらに続き、地元の歴史・文化を市民に伝える施設として倉敷考古館が開館しました。なお、開館当時は、江戸時代の米倉を改装した本館だけでしたが、1957年には新館を増築しています。

学芸員 伴祐子さん
倉敷考古館学芸員 伴祐子さん

伴さん

新館増築は、アイビースクエアや倉敷国際ホテルなどを手掛けた、倉敷を代表する建築家の浦辺鎮太郎さんによるものです。 “新旧の対比” という生涯に渡る建築コンセプトの最初の設計でした。なまこ壁の土蔵と鉄筋コンクリートを組み合わせた、独特の外観をもつ博物館です。

1回を見下ろす
考古館階段と窓
蔵の梁

こうして生まれたレトロかつモダンな魅力が漂う倉敷考古館は、今では倉敷美観地区のシンボル的な存在となっています。

倉敷考古館にはどのような遺物が展示されているの?

展示室1
展示室2
展示室3
企画展展示室

米倉を改装した本館は2階建てで、新館はステップフロアによる中2階を含み4つの展示室を持つ造り。岡山県で発掘されたものを中心に、貴重な遺物の数々が、時代ごとに分けて展示されています。伴さんに見どころを伺いながら、館内を巡りました。

埴輪のオブジェがお出迎え

1階にある2体の埴輪
埴輪アップ写真。ユーモラスなポーズと表情
生けられた草花1
1階では生けられた野の草花も来館者を迎えてくれます
生けられた草花2

1階で愛嬌たっぷりに出迎えてくれるのは、2体の埴輪のオブジェ。美観地区の「たけのこ村」に飾られていたものを閉店後に譲り受けたそうです。

鷲羽山遺跡 旧石器時代の石器

展示された石器

倉敷市児島の鷲羽山遺跡で発掘された石器の数々を展示。鷲羽山遺跡は、西日本で初めて存在が確認された約2万年前の旧石器時代の遺跡です。

里木貝塚 縄文土器

里木貝塚展示室

倉敷市船穂町にある里木貝塚は1969年に倉敷考古館が発掘調査を行った遺跡です。縄文時代中期から後期に渡る縄文土器の変遷を見ることができます。

3つの縄文土器
針や装身具などの出土品

津島遺跡 弥生時代の桃種

展示室
展示品を説明する学芸員の伴さん

岡山市津島グラウンドにある津島遺跡で発掘された桃の種。弥生時代にも桃が多く栽培されていたのかもしれません。現在食べられている桃の種も展示しているので、その大きさを比較できます。

弥生時代の桃の種
上の黒い3つが弥生時代の桃の種。現代の清水白桃の種より小さい。弥生時代から岡山の人は桃が好きだったのかも?
岡山県南部の主要な弥生時代遺跡の位置を記した地図
壁には岡山県南部の主要な弥生時代遺跡の位置を記した地図が。展示物と併せ大昔の岡山の人々の暮らしに思いを馳せるのも楽しい

金蔵山古墳 古墳時代の装身具

展示室
金山古墳出土の首にかける装身具
金山古墳出土の装身具
剣や鎌
金山古墳出土の剣や鎌
装身具
古墳時代の装身具

岡山市沢田にある、大型の前方後円墳の金蔵山古墳から発見された装身具。大きな塚に埋葬される人は、勾玉やコハク玉といった美しい玉類などの装身具を身に着けていたそうです。

津山市近郊で出土された奈良時代の奈良三彩壺

国指定重要文化財の奈良三彩壺

国指定重要文化財の一つで、唐三彩を手本に作られた日本初の複数の施釉陶器です。都で作られたものですが、特別な功績のあった地方の豪族へ褒美として与えられたと考えられます。その人物が亡くなった際に骨壺として使用されました。完形で残るものはとても貴重なのだそうです。

鶏頭の埴輪
どこかユーモラスな鶏頭の埴輪も展示してあります

お土産コーナー

拓本
瓦や土器の拓本。歴史薫る倉敷土産としてぜひ
ポストカード
ポストカードもいろいろ
スマートフォンケース
楯築神社のご神体の文様をデザインしたスマートフォンケース

1階入口付近にはお土産コーナーもあります。人気のポストカードのほか、楯築神社(倉敷市)のご神体「旋帯文石」(国指定重要文化財)の文様をデザインしたスマートフォンケースなど、歴史好き垂涎のミュージアムグッズも販売。こちらのコーナーは無料で入場できます。

考古館を図案化した手ぬぐい
美観地区を象徴する端正な白壁の考古館を図案化した手ぬぐい

ユニークな企画展にも注目

倉敷考古館では、期間限定で企画展も実施しています。その期間ならではの展示物もあるため、事前にHPをご確認ください。

連携企画展「音の造形―古代アンデスの笛吹ボトル」

「音の造形―古代アンデスの笛吹ボトル」会場

会期:~11月5日(日)

倉敷考古館の開館に携わった大原總一郎は、知人から南米ペルーの貴重な歴史資料を数多く譲り受けており、その一部は常設展として展示されています。今回そのような縁にちなみ、連携企画展「音の造形―古代アンデスの笛吹ボトル」を開催。笛吹ボトルとは、南米大陸で栄えたアンデス文明で発明された、神様へ捧げるお酒を入れていたボトルのこと。揺らすことで音が鳴ります。会場には、各地から集められた、人物や動植物などさまざまなモチーフの笛吹ボトルを多数展示。実際に動かし音を出して楽しむことも可能です。また、岡山盲学校の生徒が作成した笛吹ボトルも展示しています。

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まとめ

開館から80年近くにわたり、貴重な遺物の数々を展示し倉敷・岡山の歴史を伝え続けてきた倉敷考古館。

「考古学というと『難しそう』というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、自分が住んでいる町にどんな歴史があるのか興味が生じた際は、ぜひ気軽に訪れてほしいですね」と伴さんは話します。美観地区の街歩きを楽しむついでにふらりと立ち寄ってみれば、「身近な場所にこんな遺跡があったなんて!」と、きっと新しい発見があるはずです。

倉敷考古館

http://www.kurashikikoukokan.com/

住所:岡山県倉敷市中央1-3-13 

TEL:086-422-1542

営業時間:9:00~17:00(入館締め切りは30分前) 

休館日:毎週 月・火曜日、年末年始(12月27日~1月2日)
※祝日・振替休日は開館

入館料:一般500円(団体400円)、大学・高校生400円(団体320円)、中学・小学生300円(団体240円)

※団体は20名以上 

※企画展・特別展開催期間は別料金

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