地元民こそ乗ってみたい! 倉敷美観地区の人力車で味わう観光気分

倉敷美観地区に止められた人力車の写真

倉敷美観地区といえば、岡山の地元民なら一度は行ったことがあるはずの観光地。江戸時代、徳川幕府の直轄地・天領として栄えたこの街には、白壁の建物をはじめ、今なお当時の歴史情緒あふれる風景が残ります。そんないわずと知れた観光地で、人力車に乗れるのはご存じですか?今回は美観地区の人力車に、編集スタッフが実際に乗ってきました!

人力車を引く「えびす屋倉敷店」の俥夫(しゃふ)・百田祐作さんにお聞きした、美観地区の歴史や穴場スポットなどもあわせて紹介します。

えびす屋倉敷店 俥夫(しゃふ)の百田祐作さんの写真
えびす屋倉敷店 俥夫(しゃふ)・百田祐作さん
人力車の写真

早速、人力車に乗ってみました

えびす屋オリジナルの人力車ルートマップの写真 その1
えびす屋オリジナルの人力車ルートマップの写真 その2

今回、編集スタッフが実際に乗車したのは、「美感の旅」という30分貸切のプラン。美観地区の中心部にある観光案内所「倉敷館」の前で乗車し、本町・東町などを巡ります。

早速、俥夫の百田さんによるエスコートで人力車に乗り込み、いよいよ出発です。柳並木と白壁の建物が建ち並ぶ倉敷川沿いを走り始めると、前方から吹いてくる優しい風がとっても心地良い!美しい景色に見入っていると、大人2人を乗せているにも関わらず、全く息を切らすことなく美観地区の街並や歴史について百田さんが解説してくれました。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その1

白壁の街並み

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その2
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真

百田さん

白壁の建物は、白漆喰でできた土蔵です。美観地区の一帯は、江戸時代に都があった京都や四国、九州のちょうど中心に位置していたため、物流の拠点に適しているということで幕府が“天領”に指定したわけです。このあたりは、そもそも海だった場所。文献によってばらつきはありますが、だいたい500年ほど前に行われた干拓事業で生まれた街が、その後は物流拠点として栄え始めたといわれています。そして、拠点となるに当たり、各地から集まる物資を保管する蔵が必要となったため、湿度と温度を一定に保ちやすい白漆喰の蔵が多く建てられました。江戸時代の蔵ですが人々の手で長い間丁寧に守られてきたので、今もこうして残っているんです。

美観地区に佇む白漆喰の蔵の写真
人力車を止めて美観地区の説明をする百田さんの写真

今も昔も人々が暮らす街

店舗が軒を連ねる“記念日通り”を過ぎ、気が付けば観光客もそれほど多くない、古い町家が並ぶ静かな本町通りに入ってきました。本町通りの風景は200年ほど前、江戸時代後期からほとんど変わっていないのだそう。ふと見ると、学校の帰りらしき、ランドセルを背負った小学生が歩いていました。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その3

百田さん

江戸時代、このあたりは商人さんたちの生活の場だったそうです。現在も店舗より民家が多く、多くの方が実際に生活しています。美しい街並みは地元の方々の協力あってのことですし、私たちもみなさんの生活の妨げにならないよう気を付けています。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その4

繊維産業の歴史

人力車は「倉敷アイビースクエア」の裏手にある細い路地を通って、倉敷川沿いへと戻っていきます。「倉敷アイビースクエア」は、130年ほど前に建てられた倉敷紡績所(現:クラボウ)の工場を再開発した複合施設。そして、この倉敷紡績所の二代目社長・大原孫三郎氏により創設されたのが、大原美術館です。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その5

百田さん

そもそも大原家は綿問屋として財を成しました。もとは海だったこともあり、倉敷の地盤は塩分が多く、米や農作物が育ちにくかったんです。そこで、塩分に強い綿花を栽培するようになりました。そのうち繊維・紡績産業が栄え、江戸時代は足袋の生産、戦時中は軍服製造と発展を続けてきました。そして、現在ではそれらの歴史とともに培ってきた繊維技術をもとに、全国シェア1位の学生服の生産地として知られるようになっています。

 

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その6

今の倉敷や美観地区があるのは、干拓地という土壌や瀬戸内の温暖な気候、そして何よりそこに住む人々の努力があってこそ。人力車に乗ってみて、これまで知っているようで知らなかった、歴史や文化に触れることができました。

俥夫のおすすめスポット・見どころ

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その7
人力車を止めて美観地区の説明をする百田さんの写真

日々、人力車を引きながら美観地区の歴史や文化を解説している俥夫のみなさん。「何気なく建っている建物が文化財レベルなので、私たちも毎日通るたびに感動します」と語る百田さんに、俥夫ならではのおすすめスポットや見どころを教えてもらいました。

東町の呉服店「楠戸家住宅(はしまや)」

百田さん

美観地区でも閑静な東町にある楠戸家住宅。屋号には「はしまや」とあります。この建物は150年以上前のもので、明治2年創業の呉服屋です。今も現役で商売を続けられていますが、他にも、若い世代へのイベントスペースとしての貸し出しや、蔵の部分をリフォームしてイタリアンレストランや喫茶店としての営業などを行っています。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その8
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの写真
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その9
楠戸家住宅の看板の写真

両側が“なまこ壁”!撮影におすすめのスポット

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真

百田さん

大原美術館に近い小道に、個人的におすすめのスポットがあります。両サイドが“なまこ壁”に挟まれている通りで、美観地区でも珍しい場所です。あまり人通りがなく奥行きもあるので、ここで写真を撮るのもおすすめ。なまこ壁とは、瓦を敷き詰め、雨水が浸み込まないように、その隙間を漆喰で埋めこんで造られた壁のことです。

大原家の別邸は通称“緑御殿”

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その9
人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みと俥夫さんの背中の写真 その10

百田さん

大原美術館を過ぎたあたりで、近くに見えるのが大原家の別邸「有隣荘」です。緑色の瓦にちなんで、“緑御殿”ともいわれています。この特徴的な色は、90年以上もの間、日光と雨風を受け続けたことで自然に変色したもので、人工では作り出せない色。歴史を継いできたからこその、味わい深い色味です。

人力車に揺られながら堪能する美観地区の町並みの写真

今回、初めて美観地区の人力車に乗ってみて、歩いて回るだけでは知ることができない歴史や、文化のなりたちを学ぶことができました。「訪れる方々に魅力を伝えられるよう、人力車を引くだけでなく、日々歴史の勉強もしています」と百田さん。観光で訪れる人はもちろん、地元民だからこそ、人力車に乗ることできっと新しい発見があるはずです。この機会に、ぜひ乗ってみてください。

美観地区と人力車と百田さんの写真
人力車の写真
人力車の写真

DATA

えびす屋 倉敷店

住所:岡山県倉敷市本町8-21

TEL:086-486-1400

FAX:086-486-1414

営業時間:9:30~日没(シーズンにより変動があります)

主な乗り場:倉敷物語館、中橋

アクセス:JR山陽線倉敷駅 徒歩9分

関連リンク

えびす屋 倉敷店

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