ひょんなげ百景 NO.033 児島にもう一つ駅がある!?「 幻の旧児島駅」
「児島には駅が二つあるらしい」――。KCTタウン編集部に、こんな謎の情報がもたらされた。え、JR児島駅じゃなくて? もうひとつの児島駅?
その真相を確かめるべく、編集部は児島味野のまちへ向かった。


時間が止まった“もう一つの駅”


JR児島駅から少し歩くと、街並みの一角にレトロな欧風の建物が見えてきた。それこそが“もう一つの児島駅”――旧児島駅だ。


この駅は、かつて下津井電鉄線の終着駅として1913年に誕生。当時の児島は、港町・下津井と倉敷を結ぶ交通の要だった。80年近く地元の足として活躍したあと、1991年の下津井電鉄廃線とともにその役目を終えた。



1988年に建て替えられた駅舎は、アーチ屋根が印象的な欧風デザイン。まるで時間が止まったかのように、いまも静かに佇んでいる。中に入ると、駅名標や機械計器、古いベンチや鉄道グッズが展示されていて、ノスタルジーが胸をくすぐる。
「風の道」を歩けば、鉄道の記憶に出会う

この旧児島駅はいまも活用されている。旧児島駅から旧下津井駅まで、約6.3キロにわたる廃線跡はいまサイクリングロード「風の道」として整備されていて、旧駅舎は児島側の起点となっている。

線路の代わりに続くのは、サイクリングや散歩を楽しむ人々の足跡。かつて列車が駆け抜けた道を、いまは風と人がゆったりと通り抜けていく。沿道には古い看板や鉄骨が残り、当時の面影を随所に感じられる。
駅から少し足を延ばせば、児島ジーンズストリートや旧野崎家住宅へも行ける。旅の途中でレトロな駅舎に立ち寄り、ジーンズのまちを歩く――そんな“児島時間”の過ごし方もおすすめ。


幻の駅なんていってしまったけれど、旧児島駅は確かにここにある。列車は来ないけれど、風の音と子どもたちの笑い声が、いまもホームに響いている。かつての駅が、いまは街の憩いの場所に。児島の記憶とともに生き続ける“もう一つの駅”を、次の休日に探してみよう。

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