瀬戸芸2025直前特集:岡山から直島へ、アートの島をサイクリングで巡る完全ガイド
岡山県玉野市から南へ約3kmの距離にあり、瀬戸内海に浮かぶ直島(香川県直島町)。江戸時代から幕府の天領として栄えた歴史を持ち、現在は「現代アートの聖地」として世界的に知られる島です。4月に実施される瀬戸内国際芸術祭の開催エリアとしても、一層注目を集めています。
そんな直島は、島内を自転車で巡ることが可能。自分のペースで移動でき、気になるスポットにサクッと立ち寄れます。今回は、編集部が実際に「直島サイクリング」に行ってきました。
※記事内の情報は2025年1月時点のものです。
※瀬戸内国際芸術祭2025の開催期間中、レンタサイクルや美術館は予約が確実です
宇野港から直島へのアクセス
フェリー乗り場は、JR宇野駅を出て道路を渡るとすぐ。乗船券は、待合室の中にある券売機で購入できます。
宇野港フェリー乗り場から直島(宮浦港)への行き方
宇野港から直島の西端にある宮浦港までは片道300円ですが、往復チケット(570円)を買う方が圧倒的にお得です。往復チケットの有効期限は発券日の翌日までのため、日帰りや1泊2日の滞在なら往復チケットがおすすめです。
【注意】時刻表は「四国汽船」公式サイトで確認
今回は9:22発に乗船。ゆっくり岸から離れ始めると、気分は一気に旅モードに。フェリーは小さな島々の間をぬって航行するので、展望デッキから無人島を眺めながら「あの島でキャンプしたら絶対いい感じ!」などと想像するのも楽しいですよ。
下船時は、ゲート右側の歩道を利用するのがおすすめです。海の駅フェリーターミナルやアート作品「赤かぼちゃ」へ遠回りせずに向かえます。
まずは島のシンボル「赤かぼちゃ」に挨拶
世界的アーティスト・草間彌生氏の「赤かぼちゃ」は、宮浦港に到着すると真っ先に目に入る島のシンボル的な作品。下船した人の多くが、最初にこの作品の元に足を運びます。
作品の内部に入ることもでき、窓から顔を出したり、内側から外の景色を撮影したりと、思い思いに写真撮影を楽しめる人気のフォトスポットです。
自転車をレンタルしよう!
続いて自転車のレンタルへ。今回利用したのは、宮浦港フェリーターミナルを出てすぐ見えてくる「おうぎやレンタサイクル」。自転車はもちろん、車やバイクも借りることができます。また、1点500円で荷物も預かってもらえますよ。
レンタルの手順と注意点
当日レンタルも可能ですが、瀬戸内国際芸術祭の期間中は混雑が予想されるため、予約が推奨されています。予約はオンラインのみで、レンタル前日の17:00までに手続きを済ませましょう。
予約ページはこちら:https://ougiya-naoshima.jp/rental.html
レンタルの流れ
①自転車を取りに行こう
自転車は全て電動アシスト付き。サイズは基本的に26インチです。小柄な方向けに小さめの自転車も数台用意しています(こちらは先着順)。島内は坂道が多いため、電動アシストは重宝します。
②レンタル料金
自転車のレンタル料金は1日1,500円で、ヘルメットのレンタルも含まれています。キャンペーン期間中などは料金が変動する場合もあります。
③営業時間と返却について
営業時間は8:00〜18:00(12月~2月は8:30~)。自転車は出庫した駐輪場に18:00までに返却しましょう。自転車の鍵はスタッフに渡すか、指定の返却ボックスに入れます。
支払いを済ませたら、倉庫から自転車を出して出発!電動アシストは、平坦な道ではエコ(ロング)モード、坂道ではパワーモードと、状況に合わせてモードを使い分けることが、バッテリーをより長持ちさせるコツです。
島内の道路は、外周の県道256号がメインルートです。自転車は、基本的に左側の車道を走行しましょう。また、見学スポットを訪れる際は、必ず専用の駐輪場に停めましょう。
おうぎやレンタサイクル
住所:香川郡直島町宮浦2249-40
営業時間:8:00〜18:00(12月~2月は8:30~18:00)
定休日:無休(臨時休業は公式インスタグラムで確認)
ホームページ:https://ougiya-naoshima.jp/
インスタグラム:https://www.instagram.com/ougiya_rentalcycle_naoshima/
家プロジェクトを巡る
サイクリングで最初に訪れたスポットは、本村地区で展開されている「家プロジェクト」。宮浦港付近から自転車で20分程の場所にあります。
こちらのプロジェクトは、点在していた空き家などを改修し、アーティストが空間そのものを作品として仕上げているもの。1998年に公開された「角屋」を皮切りに、現在は「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開されています。今回は3作品を鑑賞しました。
鑑賞チケットを購入して作品巡りへ
本村ラウンジ&アーカイブで鑑賞チケットを購入しましょう。なお、オンライン購入も可能で、予約をしておけば確実です。なお、チケットはオンラインで購入することも可能。現地で購入するよりも安く手に入ります。また、「南寺」「きんざ」を鑑賞する場合、事前予約が推奨されています。ぜひオンライン購入を活用してください。
本村ラウンジ&アーカイブでは、関連書籍やグッズを販売。オリジナルグッズも充実しています。
「角屋」
「角屋」は家プロジェクトの第1作目として1998年に公開されました。内部は真っ暗。中央のプールでは、水中にランダムで配置されたカラフルなデジタルカウンターが規則的に点滅しています。暗闇に目が慣れてくると、日本建築ならではの木造の梁や柱が見えるようになります。
最初はデジタルの無機質さを感じましたが、次第に懐かしさも湧き起こり、不思議な感覚に包まれました。
護王神社
2002年に家プロジェクトの一つとして公開された「護王神社」。直島・本村地区の氏神が祀られている由緒ある神社です。こちらは、写真家、現代美術作家、建築家と多彩な顔を持つ杉本博司氏が設計。ガラスの階段で本殿と地下の石室が結ばれ、神秘的な空間が広がっています。
本殿で静かに参拝し、スタッフから懐中電灯を借りたら地下の石室へ。暗く狭い通路は、あの世へと通じるような不安な感覚に包まれます。地上の本殿につながるガラスの階段の先には光が差し込む様子や、出口に近づくにつれて明るさが増していく情景には「再生」を感じられました。
碁会所
かつて地域で利用されていた「碁会所(囲碁を打つ場所)」があった場所に、須田悦弘氏によって2006年に公開された作品です。建物と庭、精巧に作られた木彫の椿が一つの作品となり、庭に植えられた本物の椿との対比を味わえます。シンプルながらも作品の細部に込められた意図に思いを巡らせてみましょう。
一見何もないように見える、向かって右の部屋にも、ちゃんと作品が置かれています。ぜひ見つけてくださいね!
家プロジェクト
住所:香川県香川郡本村地区
開館時間:10:00~16:30 (南寺は最終受付16:05)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
料金:共通チケット(南寺、きんざを除く)オンライン1,200円、窓口1,400円
南寺、きんざ オンライン600円、窓口700円
※「南寺」「きんざ」は予約推奨
※「南寺」は作品の性質上、5歳以下のお子様はご遠慮ください。
オンラインチケット:https://benesse-artsite.jp/general-information.html
世界屈指(?)のゆるカフェ「直島カフェコンニチハ」で絶品ランチを
散策後のランチは「直島カフェコンニチハ」へ。2010年にオープンしたこちらのカフェは、直島東端の本村港近くにあり、ウッドデッキと小さな小屋が目印です。
店内にはテーブル席、ソファ席、カウンター席が配されています。テーブルには訪れた人が自由にメッセージを書き込める「コンニチハノート」が置かれており、中には世界中から訪れた人の温かい言葉が書き込まれていました。
フードメニューは、人気のカレーをはじめ、ドリアやリゾットなど用意。ドリンクやアルコール、一品料理も豊富です。
・コンニチハカレーセット 1,700円(サラダ、ドリンク付)
エビ、イカ、ホタテなどの魚介がゴロゴロ入ったシーフードカレー。しっかりとスパイシーですが、懐かしさも感じられる味わいです。
・ミートドリアセット 1,700円(サラダ、スープ、ドリンク付)
チーズがたっぷりとろけたドリアには、ひき肉やキノコ、ナスなどの具材がたっぷり。最後の一口まで熱々です。
オーナー:山下幸紀さんから
世界屈指の“ゆるさ”を誇るカフェです。おうちでくつろぐような時間を、ゆるゆると楽しんでいただければと思います。
直島カフェ コンニチハ
直島の景色を楽しみながらサイクリング
ランチ後は「地中美術館」へ向かいます。道中は、直島ならではの景色を楽しみながら、いくつかのスポットに立ち寄ってみました。
橋本善兵衛の屋敷跡と水路
江戸時代に造られた水路の石組みが今も残ります。
直島港ターミナル
「直島カフェコンニチハ」からすぐの場所にある本村港の旅客船ターミナル。ユニークなデザインの外観が特徴的で、待合室やトイレが完備されています。本数は少ないですが、宇野港との間でも運航しています。
琴弾地(ごたんじ)海水浴場
直島の海はエメラルドグリーンに輝き、透明度も抜群。潮風を感じつつ波打ち際をのんびり散歩してみるのもおすすめですよ。
草間彌生「南瓜」(黄かぼちゃ)
桟橋の先にたたずむ、草間彌生氏の代表作。2021年に台風9号による被害を受けて姿を消していましたが、2022年に再展示されました。
本村地区から地中美術館へは、自転車で約20分。坂道が多いため、慎重な走行が必要です。道幅が狭く、車の往来もあるため、特に下り坂ではスピードの出しすぎに注意して、ゆっくりと走行しましょう。
また「ベネッセアートサイト直島場内シャトルバス」を利用するのもおすすめです。宿泊施設「つつじ荘」前から運行されています。自転車は琴弾地海水浴場に隣接する駐輪場に置きましょう。
※バスの時刻は要確認
地中美術館
2004年に開館。景観に配慮して建物の大半が地下に埋設され、外からはその存在を感じさせません。設計を手がけたのは世界的建築家・安藤忠雄氏。館内には、海外の有名芸術家の作品が展示されています。建物全体が巨大なアート作品といえますね。
鑑賞可能な人数は、時刻によって区切られています。特に土日やイベント期間は多くの方の来場が予想されますので、事前にネットで予約しておくことがおすすめです。
予約した鑑賞時刻になったらクロード・モネが作品の中で好んで用いた植物が植えられた庭を通り、美術館の内部(地下)へ入っていきます。
鑑賞時のルールやマナーについて
- 美術館内は撮影禁止です
- 一部の展示エリアでは靴を脱ぐ必要があります
- 手荷物はコインロッカーに預けます(コインは返却されます)
- 鉛筆以外の筆記用具の持ち込みは不可。どうしてもメモを取りたい場合はスタッフに借りることができます
- 鑑賞中の私語は慎みましょう
- ポリエステル素材の衣類は「シャカシャカ」音が響くため、音が出ない素材の服が望ましいです
展示アーティスト
クロード・モネ
印象派を代表する画家、クロード・モネ最晩年の「睡蓮」シリーズ5点を鑑賞できます。展示室は自然光のみ。床には、角を丸くした大理石のキューブが敷き詰められています。
ジェームズ・タレル
光そのものをアートとして提示するジェームズ・タレルの作品群も見どころの一つ。地中美術館では3作品を体験できます。
ウォルター・デ・マリア
巨大な球体と27体の金箔を施した木彫が配置された空間作品。天井から差し込む自然光だけを利用し、時間帯によって作品に異なる表情を与えます。
カフェやミュージアムショップもぜひ
地下2階にある「地中カフェ」で小休止。大きな窓からは瀬戸内海を望み、テラス席も設けられています。この日は美しい夕陽を見ることができました。
おすすめは「オリーブサイダー(600円)」と「ソライロサイダー(600円)」。心地よい酸味と甘さが、サイクリングの疲れを癒してくれます。
地下1階には「地中ストア」があり、ここでしか手に入らないオリジナルグッズが並びます。作品をモチーフにした雑貨や洗練されたアクセサリーなどが充実しているのでぜひ。
地中美術館
住所:香川県香川郡直島町3449-1
開館時間:公式HPで確認
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
※開館カレンダーを確認 https://benesse-artsite.jp/calendar/
料金: 平日オンライン 2,500円、窓口2,800円
土日祝 オンライン 2,700円、窓口 3,000円
※15歳以下無料
オンラインチケット購入:https://benesse-artsite.jp/general-information.html
フェリーで帰路へ
地中美術館を堪能後、レンタサイクルの返却へ。宮浦港からフェリーに乗って宇野港へ戻ります。なお、直島発のフェリー最終便は20:25なので、余裕をもった計画を。
夜のフェリーでは、展望デッキからライトアップされた「直島パヴィリオン」が幻想的に浮かび上がり、見送ってくれていました。街の灯りがだんだん近づいてくると、旅の終わりの寂しさと夜景の美しさが入り混じります。直島日帰りサイクリングの旅、ここに完結!
【あわせて行きたい】直島アートスポット
直島には「ANDO MUSEUM」「ベネッセハウス ミュージアム」「李禹煥美術館」など、多くの美術館が点在しています。時間に余裕がある方や、1泊してじっくり巡りたい方には、ほかに以下のスポットもおすすめです。
直島銭湯「I♥湯」
大竹伸朗氏が制作。実際に入浴できるというユニークな体験が魅力です。
杉本博司ギャラリー 時の回廊
家プロジェクト「護王神社」も手掛けた杉本博司氏の写真、彫刻、デザイン作品を鑑賞できるギャラリーです。
まとめ
瀬戸内国際芸術祭2025の開催が近づくにつれ、魅力をアップデートし続けている直島。今春には「直島新美術館」もオープン予定です。ベネッセアートサイト直島10番目の施設となるため、注目必至です。
今回紹介したコースは、初めての方でも楽しめるプランです。海風を浴びながらのサイクリングや、世界に誇るアート作品との出合いは、きっと心に深く刻まれるはず。自分だけの「直島ストーリー」を見つけに行ってみてくださいね!
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