ひょんなげ百景 NO.024 はじめて見るのになつかしい「玉島ドラム缶橋」
倉敷の玉島には「ドラム缶でできた橋」がある――そんな「ひょんなげ」情報が編集部に持ち込まれました。「じゃあ、実際に歩いて確かめてみようじゃないか」!


やってきました、倉敷市玉島。通町商店街を抜け、図書館の脇の道をてくてく歩くと、現れたのがこの橋。どーん。 ドラム缶が、105本。それが3本1組で35列、川を渡して橋になっている。いきなりですが、構造がエモい。

地元の方に聞いたところ、これは昭和55年(1980年)に設置され、昭和61年(1986年)に改修されたとのこと。つまり、40年以上、地域の生活を支えてきた立派な生活インフラ。なんでも、向こう岸の駐車場と通町商店街をつなぐために作られたそうで、「ほぼ生活道路」なんです。ありがたい存在である。揺れるのか、揺れないのかいざ、渡ってみます。最初の一歩。おそるおそる踏み出すと…



…あれ、思ったより揺れない。水面を想像していたら、意外にも「地面に足を置いている」感覚。というのも、普段はドラム缶が川底に接しているため、揺れないのです。なるほど納得。でも、水位が上がれば“本来の浮橋としての本領”を発揮するらしく、そうなるとぐらつきも出てくるのだとか。つまりこの橋、普段は地に足がついているけど、必要とあらば浮かぶという、まるで人間の理想像のような橋なのです。
映画『とんび』のロケ地だったらしい
実はこの橋、映画『とんび』(2022年公開)で、阿部寛さんが自転車で渡るシーンが撮影されたそうです。私も自転車で渡ってみたいところですが、今回は徒歩でガマン。
地元の中学生らしき子たちが「こんにちは〜」と声をかけてくれるのも嬉しい。橋だけでなく、この町そのものに、どこか昭和の風情が流れていて、心がふわっとします。

橋の周りの“静かな名所感”
橋のすぐ近くには、白鳥や鴨などの水鳥たちが静かにたたずんでいました。彼らにとっても、橋は立派なランドマークなのかもしれません。あと、橋のたもとにそっと立てられた案内板も渋い。観光地のようで観光地でない、でもちゃんと訪れる価値がある。そんな“通”好みの立ち位置です。

玉島ドラム缶橋は、派手な観光地ではありません。でも、地元に根ざした日常の工夫と、それを支え続けてきた人たちの知恵がぎゅっと詰まった見た目もユニークで「ひょんなげ」な橋でした。誰かの暮らしにちゃんと役立っていて、それでいて珍しくて、でも無理に主張しない――そういう場所が好きですね。



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