リアルに動くナウマンゾウがお出迎え 家族で楽しめる「倉敷市立自然史博物館」の魅力を大調査!

古代の化石や世界各国の昆虫標本など、約100万点の資料を収蔵する「倉敷市立自然史博物館」。自然界に関する知識を、実際に見て触って学べる体感型博物館として、1983年の開館から40年以上に渡り、地元の人々に親しまれています。そこで今回は、同館学芸員・鐵 慎太朗(てつ しんたろう)さんの解説のもと、館内をぐるっと一巡り。各展示エリアの特長やおすすめのスポットなどをたっぷりご紹介します。

1階は見学無料!ナウマンゾウだけに見とれていてはもったいない

館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、動くナウマンゾウ! 

鐵さん

マンモスだと思っている方もいますが、正しくはナウマンゾウの親子です(笑)。氷河期にはこの辺りにもナウマンゾウが生息していたんですよ。

学芸員の鐵 慎太朗(てつ しんたろう)さん

リアルな造形や動きに誰もが釘付けになる、まさに「倉敷市立自然史博物館」の“顔”ともいえる、動き鳴く復元模型ですが、鐵さんがおすすめする展示資料は、さらに奥に設置された水槽です。岡山の水辺に生息する魚や水生昆虫が展示されており、中でも希少なのが日本固有種の淡水魚アユモドキなのだとか。

鐵さん

近年では絶滅が心配されていて、繁殖が確認されているのは岡山県の旭川と吉井川、京都府の桂川のみになっています。ちなみに、全国的に見ても岡山県の三大河川はいずれも魚の種類が多いことでも知られているんですよ。1階エントランスホールは観覧券なしで見学できる無料エリアなので、ぜひ見に来ていただきたいです。

1階エントランスホールにはホッキョクグマの剥製と
オオカミの剥製も展示

4つの展示室からなる有料エリア 化石や昆虫標本が多数!

2階フロアは「岡山県のなりたち」「岡山県のいきもの」「昆虫の世界」と題された3つの展示エリアで構成されています。

化石に触ることができる「第1展示室」

岡山の海岸線の時代ごとの変遷。つい自分の住んでいる場所を探してしまいます

「岡山県のなりたち」をテーマとする第1展示室には、ナウマンゾウの骨格模型や化石、岩石、鉱物などがズラリと展示されており、地球の成り立ちや岡山・倉敷の地史を辿ることができます。岡山県で発見され、固有の名称が付けられている希少な石なども見どころの一つです。

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実際に手で触れる事ができる化石も
ルーペでじっくり観察することもできます

鐵さん

このエリアの魅力は、実際に化石に触れられること。瀬戸内海で発見されたナウマンゾウの大腿骨をはじめ、アンモナイトや木の化石などに触ることができますよ。

こちらはナウマンゾウの大腿骨。手で触れてその大きさや質感を実感できます

こんなにも多種な生き物が岡山に!? 「第2展示室」

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「岡山県のいきもの」と題された第2展示室では、県下に生息する生き物のはく製や、新見市の石灰岩地の自然をモデルにしたジオラマなどが展示されています。小型のクジラ・スナメリのほか、オオサンショウウオ、ツキノワグマ、テンなどが岡山県に生息していることが紹介されているコーナーです。

岡山の自然環境をモデルにしたジオラマ

鐵さん

生物をただ紹介しているだけでなく、「ムササビは想像以上に大きい」「モグラは案外小さい」など、実際に標本や模型を見るからこその気付きがあることが、このコーナーの魅力ですね。

ワクワクそれともゾワゾワ? 昆虫の世界「第3展示室」

昆虫を、その色の分布によって展示するユニークな展示も

第3展示室「昆虫の世界」では、カブトムシをはじめとする甲虫やきらびやかな蝶、巨大な蛾のほか、世界中に生息する大小さまざまな昆虫の標本がお出迎え。昆虫の色の多様さに着目し、パソコンの色見本を参考に配列した美しい標本など、さまざまな工夫が凝らされた展示があります。中でもおすすめなのが、「私たち親子です」というタイトルの展示資料。

成虫と幼虫が対で展示される「私たち親子です」のコーナー。扉をスライドさせるとどの幼虫がどんな成虫になるか確かめることができます

鐵さん

展示棚に設けられたスライド式の扉により、成虫と幼虫のどちらか一方が隠れる仕様になっています。何の幼虫なのか、どのような成虫になるのかをクイズ感覚で推理しながら観察してみてくだいね。

 

植物の世界が広がる3階フロア  水島港で発見されたクジラの骨格標本も

3階フロアには「植物の世界」と題された第4展示室と、随時内容の変わる「特別展示室」があります。

植物に癒される 「第4展示室」

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第4展示室は「岡山の世界」をテーマにしており、岡山や倉敷に自生している植物などを展示。19種類のドングリや18種類のカエデ、地下部分の形状が分かる竹など、身近な植物の形態や分類を詳しく学ぶことができます。

こちらは岡山県でみられる「どんぐり」。葉や幹とあわせての展示で、どんな木にどんなどんぐりができるかわかるようになっています
植物の「穂」をあつめた展示も

鐵さん

「植物のかたち」のコーナーでは、レンコンやサトイモなど、普段私たちが食べている“根菜”の中には、根ではなく茎に当たる部分を食べているものもある、ということなどが分かる内容を展示しています。また、「暮らしの中の植物」と題したコーナーでは、畳や家具、おもちゃなどに植物が使用されていることも紹介しています。私たちにとって、植物がいかに身近で欠かせないものかを再認識してもらえるはずです。

「暮らしの中の植物」コーナー

においまで体感できる! クジラの骨格標本

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フロア奥には、2021年9月に水島港で発見されたニタリクジラの骨格標本があります。やや奥まった場所にあるため、見落とされがちなコーナーだそう。

こちらはクジラの背骨
クジラが骨格標本になった経緯を説明した記事が添えられている(山陽新聞)

鐵さん

全長11.67mある、若いオスの骨格標本です。クジラとしては大きい種類ではありませんが、それでも頭骨だけで長さが3.1m、重さは180kgあります。静岡県にある標本工房で約1年かけて肉や脂が取り除かれましたが、新しいため今もまだ特有のにおいが残っています。かなり間近で見られますので、ぜひご覧くださいね。

期間ごとに内容が変わる「特別展示室」

取材時の企画展示では脊椎動物の標本作りなどに関する資料が展示されていました

第3展示室の向かいに設けられた特別展示室では、地域の有志による寄贈物をもとに、年間に4~5回のペースでさまざまな企画展示を行っています。約100万点の標本を収蔵する同館ですが、実はそのうち約9割は寄贈されたものなのだとか。

鐵さん

当館は多くの方のご厚意によって支えられています。常設で展示できている標本数は全収蔵物の約1%に過ぎないので、1点でも多く公開できるようたくさんの企画を検討しています。

家族で参加可能なイベントも多数開催!

同館では、大人も子どもも気軽に参加できるイベントを数多く開催しています。2月には、動物の頭骨をモチーフにしたスタンプでデザインするハンカチ作りや、顕微鏡を用いたコケの観察講座を実施。また3月には、市の鳥である「カワセミ」を探す屋外イベントなどが実施される予定です。また、2024年3月23日にはライトアップイベントに「倉敷春宵あかり」にあわせて「自然史博物館ナイトミュージアム」が開催。当日の17時30分から20時まで夜の自然史博物館でクイズなどのイベントが開催されます。

鐵さん

博物館というと、堅苦しいイメージを持たれがちですが、実は気軽に訪れていただくことが可能な場所です。当館では、頭に座れるトリケラトプスや、コーヒーで着色したティラノサウルスなど、学芸員が一から手作りした恐竜の模型なども各フロアに配置しています。小さなお子様も楽しめる空間になっているので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

頭に座れるトリケラトプスの頭蓋骨の模型は1階の無料エリアにあります
ティラノサウルスの頭蓋骨の模型。こちらはなんと学芸員の方の手作り

まとめ

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JR倉敷駅から徒歩15分、倉敷美観地区からもほど近い好立地に立つ「倉敷市立自然史博物館」。自然のおもしろさや多彩さを身近に感じることができます。同館公式HPで各種イベント情報をチェックして、“パオ~ン”と迎えてくれるナウマンゾウの親子や世界の昆虫標本に会いに行ってみてくださいね。

倉敷市立自然史博物館

ウェブサイトhttps://www.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/

住所:倉敷市中央2-6-1

TEL:086-425-6037

営業時間:9:00~17:15(最終入館は16:45)

休館日:月曜(祝日または振替休日の場合は、その翌日)、年末年始(12月28日~1月4日)※臨時休館日あり                                                                                    

入館料:一般150円(100円)、大学生50円(30円)、高校生以下無料、65歳以上無料

 

※()内は20人以上の団体料金

※料金は2024年1月時点                                                         

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