ひょんなげ百景 NO.037  名前が強すぎる総社の神社「魔法神社」

「ひょんなげ」って知ってますか?岡山弁で「変な」「奇妙な」「不思議な」といった意味の言葉です。「ひょんなげ百景」はKCTタウン編集部が独断でセレクトした岡山の「ひょんなげ」なスポットを連続で紹介していくコーナーです。隔週金曜日更新。

総社市槁(けやき)に、不思議な名前の神社がある――。そんな話を耳にして、編集部は早速、現地に向かいました。

国道180号線を高梁方面へ進み、農産物直売所「たね井や」の横から山へ。採石場を過ぎたあたりから道は急に細くなり、木々が迫ってきます。「本当に合ってる?」と何度も思いながら、ひたすら上る。すると、道の横にいきなり現れました。

「魔法神社」

文字だけ見ると、どうしてもファンタジー感が強い。この山中に魔法。ちょっと脳がバグる感覚です。

鳥居なし、いきなり参道

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石塔の横から、いきなり参道が始まります。鳥居はありません。道の続きのように、階段が空へ伸びています。

木々に囲まれた長い階段は、きれいに手入れされていて、下から見上げると、ほぼ空しか見えません。地元の人が大切にしている神社なんだな、と伝わってきます。
そして「登った先に何があるのか分からない」という点で、すでに魔法っぽい。これは高ぶります。

本殿の前に、青い狸?

階段を登り切ると本殿があり、そこでまず目に飛び込んできたのが――

青い狸。かなり青い。しかも、にこやか。この神社で祀られているのはキュウモウ狸(キウモウ狸)と呼ばれる、伝説の化け狸です。

言い伝えによると、キュウモウ狸は室町時代末期、ヨーロッパから来たキリスト教宣教師の船に紛れて日本に渡来した存在。国際派です。人に化けて村人を助けたり、悪戯をしたりしながら暮らし、あるとき牛馬の疫病が流行すると、魔法をかけてそれを鎮めた――そんな伝説が残っています。

そのため、魔法神社は牛馬の守護神として信仰されてきました。参道の階段がなだらかで、両脇に土の道が残されているのも、かつて牛馬を連れて参拝していた名残だそうです。

「魔法」は、あの魔法じゃなかった?

ここで気になるのが、やはり名前の由来。実はこの「魔法」、
西洋の魔法とは関係ありません。近くにあった摩利支天(まりしてん)を祀る社に由来し、「摩法(まほう)」が転じて「魔法」になったと伝えられています。結果として、とてもマジカルな名前だけが残りました。

狸、増殖中

境内には、青い狸像がいくつも並んでいます。どれも表情が微妙に違い、なかなかの存在感。熱心な信者さん(&狸ファン?)の寄進によるものだそうで、数年前より確実に増えているとのこと。確かに、昔の写真と比較して増えていました。

名前と伝説のインパクトに反して、境内はとても静かで清潔。屋根瓦も新しく、きちんと管理されています。10月4日の縁日には、かつて牛馬を連れた参拝者で賑わったそうですが、現在は山中の落ち着いた神社です。

魔法神社は、聞けば聞くほど不思議で、現地に立つと妙に納得する場所。今日も、総社市槁の山の中に魔法神社は、そこにある。山のてっぺんで、今日も静かに、リアルに「魔法」は続いています。

ひょんなげ度90

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