ひょんなげ百景 NO.034 江戸時代版パナマ運河!? 「一の口水門」
倉敷市船穂町、高梁川沿いの道を走っていると、ふいに視界の端に「異様に立派な門」が見えた。しかも、門の向こうに道はない。水だけが流れている。
……これ、なに?
実は江戸時代のハイテク装置
調べてみると、これは「一の口水門」。江戸時代前期の1645年(正保2年)に造られた、石造りの閘門式水門というものらしい。備中松山藩主・水谷勝隆が「新田開発いくぞ!」と勢いづいて建設したもので、高さ7メートル、幅2.6メートル。当時としては超・大型インフラだ。
高梁川の水位を調節しながら、船を通す仕組み。パナマ運河を通る船を思い浮かべてもらうといいかも。パナマ運河は水位差約26メートル。こちらは水位差数メートルだけど、江戸の人たちは、石と木でそんなことをやってた。侮れない。
一の口水門は、高瀬舟が行き来した9kmの運河「高瀬通し」のスタート地点。舟は50石積み(約7.5トン)の荷を運び、倉敷と玉島港を結んでいた。まさに物流の大動脈。いまで言うなら、トラックターミナルの第一ゲートだ。でも門は石。動力は人力。それでも200年以上、ちゃんと機能していた。江戸の技術、タフすぎる。
1925年(大正14年)の高梁川改修で役目を終え、いまは農業用水路の一部として細々と現役を続けている。
現場を離れても、完全にリタイアしないあたり、仕事熱心すぎる。
日本遺産に選ばれた、静かな門
一の口水門は、現在、日本遺産「一輪の綿花から始まる倉敷物語~和と洋が織りなす繊維のまち~」の構成文化財として登録されている。つまりこの“川辺にある石の門”、国が正式に「物語を語る遺産」と認めた存在なのだ。……そう聞くと、なんだか急に格が上がる気がする。
でも現地は、とても静か。説明板も控えめで、観光地っぽさはゼロ。「見に来てくれてありがとう」と言わんばかりに、風の音と水のせせらぎが迎えてくれる。
いままで「うへえ!これはひょんなげじゃあ!」と取り上げてきた百景たちも実は結構な頻度で日本遺産の構成文化財だったりして、この地はあなどれないなあとあらためて思いました。
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