12月BS12「土曜洋画劇場」は巨匠B・ベルトルッチ監督✕坂本龍一 オリエント三部作
BS12 トゥエルビでは毎週土曜夜7時より世界各国の名作・佳作洋画をお届けする「土曜洋画劇場」を放送しています。
12月のラインナップはイタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ監督のオリエント三部作『シェルタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』『ラストエンペラー』です。いずれの作品も音楽は日本人初のアカデミー作曲賞を受賞した坂本龍一の手によるものです。
BS12 トゥエルビはKCTにご加入中で、BSパススルーコースをご利用の方はどなたでも視聴可能です。
12月10日(土) 『シェルタリング・スカイ』
坂本龍一が音楽を手掛けたベルナルド・ベルトルッチ監督のオリエント3部作の2作目。1947年の北アフリカを舞台に、すれ違う一組の夫婦が辿る過酷な運命を描くヒューマンドラマ。(英語・日本語字幕)
■出演:デブラ・ウィンガー、ジョン・マルコヴィッチ、キャンベル・スコット、ジル・ベネット、ティモシー・スポール ほか
■スタッフ:監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、音楽:坂本龍一、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
■コピーライト:(c)The Sahara Company Limited & Tao Films SRL.1990
12月17日(土) 『リトル・ブッダ』
オリエント3部作の最終章。キアヌ・リーブス主演、ブッダの魂を受け継ぐと告げられた少年の旅路をなぞり、輪廻転生の神秘に迫る壮大なドラマ。(英語・日本語字幕)
■出演:イン・ルオチェン、キアヌ・リーブス、アレックス・ヴィーゼンダンガー、ブリジット・フォンダ、クリス・アイザック ほか
■スタッフ:監督、脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、音楽:坂本龍、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
■コピーライト:© TF1 D.A ‐ RECORDED PICTURES COMPANY (Londres) ‐ SERPROCOR ANSTALT (Vaduz) ‐ TAO FILM (Italie) / 1993
12月24日(土) 『ラストエンペラー』
オリエント3部作の1作目。アカデミー賞9冠、僅か3歳で即位した清朝最後の皇帝溥儀の生涯を、世界初となる紫禁城ロケとともに壮大なスケールで綴った歴史大作。音楽を担当し、日本人初のアカデミー作曲賞に輝いた坂本龍一は軍人 甘粕正彦役で出演。 (英語・日本語字幕)
■出演:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、デニス・ダン、ヴィクター・ウォン、高松英郎、坂本龍一、ピーター・オトゥール、マギー・ハン ほか
■スタッフ:監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、音楽:坂本龍一、デヴィッド・バーン、スー・ソン、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
■コピーライト:(c)Recorded Picture Company
壮大なスケールと映像美で無常観を描く(映画評論家・立花珠樹氏)
映画史に輝く坂本龍一の音楽も必聴 『ラストエンペラー』などベルトルッチ監督のオリエント3部作。
12月のBS12トゥエルビ土曜洋画劇場では、イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『シェルタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』『ラストエンペラー』を相次いで放送する。映画の舞台から「オリエント3部作」と呼ばれるこの3作品の音楽は、いずれも坂本龍一が担当している。〝光の魔術師〟といわれる撮影監督ヴィットリオ・ストラーロの壮大で美しい映像を堪能しながら、『ラストエンペラー』で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞した坂本の映画音楽に耳を澄ませてほしい。
放送の順番に沿って、各作品の見どころを紹介しよう。
【「あと何回、満月を見るのだろう」―『シェルタリング・スカイ』】
『シェルタリング・スカイ』(1990年)の舞台は、1947年の北アフリカ。米ニューヨークから訪れた夫婦が、砂漠地帯の圧倒的な自然と異文化を前に、過酷な運命をたどる。倦怠期を迎えた2人の関係を見つめ直すはずだったのに、まるで西洋文明のもろさを象徴するかのように壊れていく男女を、ジョン・マルコヴィッチとデブラ・ウィンガーが印象的に演じている。
原作は、ニューヨーク出身の作曲家・作家ポール・ボウルズが1949年に出版した長編小説。モロッコのタンジールで長年暮らしたボウルズは、映画の後半に特別出演し、ラストシーンで、こうつぶやく。
「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。だがすべて物事は数回起こるか起こらないかだ。自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出も、あと何回、心に浮かべるか? 4~5回、思い出すのがせいぜいだ。あと何回、満月を眺めるか? せいぜい20回だろう。だが人は、無限の機会があると思い込んでいる」
ボウルズは、撮影から約10年後の1999年、88歳で死去した。だが、生と死への思索に富んだ彼の言葉は、今も多くの人を引きつける。がん闘病中の坂本龍一は、文芸誌「新潮」で今夏から連載を始めた自伝のタイトルを「ぼくはあと何回、満月を見るのだろう」と名付けた。坂本にとって、『シェルタリング・スカイ』は、それほど深く記憶に刻み込まれた大切な作品なのだろう。
【キアヌ・リーブス演じる若き釈迦も見どころ―『リトル・ブッダ』】
『リトル・ブッダ』(1993年)は、米シアトルに住む9歳の少年ジェシーが、チベット仏教の高僧の生まれ変わりと目されて、ブータンに向かう物語だ。このメーンストーリーに並行して、2500年前のインドを舞台に、釈迦の半生が描かれていく。
宗教的なテーマを扱っているが、釈迦の伝記や、仏教の輪廻転生という考え方を、楽しみながら学べるファンタジーだ。
出演者で目を引くのが、シッダールタ王子と呼ばれていた若き日の釈迦を演じたキアヌ・リーブスだ。レバノンで生まれ、祖母は中国系ハワイアンという「オリエント」にふさわしい出自と同時に、人格者としても有名な彼にぴったりな役と言えるかもしれない。道を求めて苦行に励む若い王子の姿には、『マトリックス』や『ジョン・ウィック』など人気シリーズのキアヌとは異なる、美しく新鮮な魅力がある。
映画の一つのテーマになっているのが「無常」だ。ジェシーに「無常って何なの?」と、尋ねられたチベットの高僧は、こう答える。「周りの人間たちを見なさい。世界中の人々がこの瞬間を生きているが、100年たてば皆死んでしまう。これが“無常”だ」
限りある命のはかなさを見つめたこうした無常観が「オリエント3部作」には共通して流れている。
【時代に翻弄された数奇な生涯―『ラストエンペラー』】
『ラストエンペラー』(1987年)は、3作の中では最も早く作られたが、今回はトリで放送される。中国・清朝の「最後の皇帝」である溥儀(ふぎ)の数奇な生涯を描いたこの映画は、それにふさわしい超大作だ。
北京の紫禁城でのロケや、ローマに作った大規模なセットで撮影した壮大で華麗な映像はもちろん、人間ドラマとしても胸を打つ優れた作品になっている。
溥儀役のジョン・ローン、少年時代の溥儀の家庭教師を務めた英国人を演じたピーター・オトゥールら世界的な大スターに伍して、音楽を担当した坂本龍一が俳優としても出演。満州国の建国に暗躍した日本の軍人、甘粕正彦を演じ、独特の存在感を示している。
米アカデミー賞では、坂本が、音楽を共同で手がけたデビッド・バーン、蘇聡らとともに作曲賞を受賞したのをはじめ、作品賞、監督賞、撮影賞(ヴィットリオ・ストラーロ)など9部門で受賞するという快挙を成し遂げた。
何度も見た作品だが、今あらためて見ると、映画の中で描かれる日本の戦前史(満州事変を起こし、傀儡政権として満州国をつくり、溥儀を皇帝に据える、など)が、現在進行中のロシアのウクライナ侵攻と重なって見える。悲惨な戦争を二度と起こさないためにも、過去の歴史を学び、伝えていかねばならないのだ。
見どころを挙げればきりがないが、心に残るのは、幻想的なラストシーンだ。老いて私人となった溥儀が、今や観光地となった紫禁城で、守衛の息子に、かつて皇帝だった証拠を見せる。そのとき溥儀が浮かべる穏やかな笑みに、全てが言い尽くされているような気がした。
BS12の視聴方法
BS12は現在BSデジタル放送を見られる人であればだれでも無料で視聴可能です。詳しくは以下の動画をご覧ください。
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